第一章 終わりと始まり ―U―
「さーて、どうしよっかな。」
取り合えず煩くなる空腹の腹を黙らせるため、先程シシアから貰ったおにぎりを食べることにした。適当に人の邪魔にならないところを探し、壁に寄りかかり辺りを眺めながら食べ始めた。
「お、美味しい。」
シンプルな塩味のおにぎりはすごく美味しく感じてしまい、銀は残さず全て食べつくした。「ごちそうさま。」とシシアに感謝し、ひとまず落ち着いた銀はまたバイト探しを始める。
武器屋・道具屋・防具屋・宿屋や怪しそうな店など様々な場所をあたるが、皆口を揃えてこう言った。
「悪いけど、人雇うほどの余裕がないんでね。」
そう言われてしまうと仕方がない。この村―スピラは森に囲まれているため、あまり人が寄らない。寄るとしたら冒険者や、そこそこ腕が良く自分の身が守れるもの、そのような人に守ってもらいながら来る奴ぐらいしかいない。この村を囲む森―ルーピアの森にはモンスターが出て、人々を襲う。森の奥へ行くに連れてモンスターのレベルはどんどん高くなっていく。人々はモンスターに怯えながら、毎日を過ごしている。
「スプラは諦めて、他の所へ行こうかな…」
バッグの中から小さく折りたたんである地図を広げる。一番近いのは水の都と呼ばれる―グラベリア。大きな湖に浮かぶスピラより大きく、なにより金持ちの屋敷が多い街。盗賊をやっていた頃に何回か行った事がある。
「よし。次はグラベリアに行こ―」
「聞いたかい?」
「あぁ、森の奥にある屋敷に行った精霊術士様が三日経っても帰ってこないんだろ?」
「これで何人目だろうね…あぁ、怖いな…」
村の住民らしき男三人の話し声が聞こえた。『また』と言うことは一度じゃなく、何回かあったということ。三日も経って帰ってこないと言うことは―銀はそれ以上考えるのをやめた。
「あのースミマセンが、その話について詳しく聞かせてもらえませんか?」
突然話しかけられ驚いていたが、すぐにその話を教えてくれた。
ここから森を北に進んだところにとても古いが大きな屋敷があるらしい。元は金持ちの夫婦が住んでいたが、モンスターが現れてしまってからは逃げてしまい、モンスターが住み着いてしまったというらしい。その屋敷の奥には、レアな宝があると言うことを聞き腕に自信のあるものや冒険者たちが向かった誰一人帰ってこないらしい。銀はそれを聞き、少し考えてみた。
(レアなお宝=お金になる)
銀は礼を言うと、道具やに向かい適当なアイテムを買うと例の屋敷に向かうことにした。
「…っと、その前に。」
バッグからがさごそと取り出したのは、少し古そうなごついゴーグル。銀のお気に入りだ。これを付けなきゃやる気が出ない。銀はそれを頭に付けると、森の奥へと走り出した。
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