第一章 終わりと始まり ―Ⅲ―
―ルーピアの森―
銀は森の奥深くの例の屋敷を目指し走る。
途中、レベル５程度のモンスターにで出会ったりしたが戦う時間が勿体無く無視して通り過ぎて行った。森の中に人の気配はなく、モンスターばかりがうろついていた。
暫く走っていると、木の陰で何かがごそごそ動いているのを見つけた。人間かモンスターか―銀は一応確認することにした。右手をダガーに添え、気付かれないよう物音を立てないように近寄る。木の陰からそっと頭を出すと、そこには真っ白で、額に小さな赤い石が埋め込まれているL-DORAGONの赤ちゃんが木の棒を振りながら遊んでいた。
「キュー。」
ドラゴンは人の近寄らなさそうな洞窟や森のずっと奥で親と一緒に住んでいるはずだが、このL-DORAGONの赤ちゃんは一人みたいだった。銀はダガーから手を離し、驚かさないようにL-DORAGONの赤ちゃんの横に座る。
「わぁ・・・L-DORAGONは初めて見たよ。」
銀に気付いたL-DORAGONの赤ちゃんは、棒で遊ぶのを止めて銀をじっと見た。目が合った銀は、ニコッと笑いかけ手を伸ばすと―
―かぷっ。
噛まれた。一度噛むと美味しくないのか、すぐにL-DORAGONの赤ちゃんは噛むのをやめ、また木の棒で遊び始めた。
「イテテッ…歯型がついてるよ。お腹が空いてるなら、コレあげるよ。」
噛まれて赤くなった手と反対の手で、バッグから先程道具屋で買ったアイテムの袋を取り出しその中からスプラで採れる『スプラの実』をL-DORAGONの赤ちゃんの目の前に差し出す。L-DORAGONの赤ちゃんは自分の持っている木の棒と、そのスプラの実を見比べた。
「キュ。」
「あっ、くれるの？」
L-DORAGONの赤ちゃんは木の棒を銀に渡し、代わりにスプラの実を取りかぷっと噛付いた。すごくお腹が空いていたのか、スプラの実はすぐにL-DORAGONの赤ちゃんのお腹の中に消えてしまった。銀は食べ終わったのを見届けると、木の棒をその場に置き立ち上がった。
「キュキュー？」
「ゴメンね。俺はちょっと用があるから、またね！」
銀はそういってL-DORAGONの赤ちゃんと別れた。その場でぽつんと座っているL-DORAGONの赤ちゃんは、辺りを見回してから立ち上がり銀が去ったほうに向かって走り出した。
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