第一章  終わりと始まり ―W―


走っても走っても、木ばかり。次第にモンスターが強くなっていきダガーを使うことになってしまうが、銀は止めまでは刺さずある程度動けなくなるまで攻撃しその場から逃げた。ここはモンスター達の住処、そこに勝手に入ったら襲われるに決まってるいる。だが、モンスターによっては自分の住処に入ってもその者が荒らさないと分かったら、攻撃はしてこない。縄張り意識が強い奴は、近づくだけで攻撃してくる。

「あれ…多分、ここら辺だと思うんだけど…」

銀は辺りを見回すが古い屋敷など見当たらなく、地図を広げても分からず、磁石も使い物にならなかった。

「完璧、迷った?」

「迷子ですか?そこのお兄さん。」

「わぁぁぁーーー!!!」


                


突然、木にぶら下がった少年が銀の前に顔を出した。少年は、くすくすっと笑うと木から手を離し地面に着地した。

「クスクスッ…驚いてる〜♪」

「そりゃあ、突然目の前に人が現れたら驚くよ。(…にしても、気配が無かったなこの子。)」

「ゴメンゴメン♪僕は、ベルゼって言うんだ。お兄さんの名前は?」

「あぁ、俺は銀。宜しくね」

「ところでお兄さん?こんな森の中にいるってことは、お兄さんも噂の古い屋敷へ?」

「うん。ちょっと、興味があってね。」

少年は「そっか。」と言うと、ニコッと笑って数歩歩き振り返る。

「僕も噂を聞いて、ここへ来たんだ♪で、屋敷を見つけたのはいいんだけど…やっぱり怖くなって。お兄さん、良かったら一緒に行かない?僕ちゃんと自分の身は自分で守るから!」

突然の願いに戸惑う銀。悪い子では無さそうだし、自分の身は守れると言った。それなら―

「いいよ。君は屋敷の場所を知ってるみたいだし、宜しくベルゼ。」

「やったー♪」と喜んで飛び跳ねるベルゼ。銀も迷子ではなくなるのでほっと一安心する。銀はベルゼの案内で、例の屋敷へと向かった。







暫く歩くとベルゼは立ち止まる。だが、辺りを見回しても木ばかりで何も無い。

「ベルゼ?」

「風の結界。屋敷には弱いけど結界が張ってあるんだ♪だから、精霊術士じゃないお兄さんみたいな人達は屋敷が見つからずさっきみたいに迷子になっちゃうのです。」

ベルゼがそっと結界に触れると、今まで結界が見えなかった銀も何となくだが見えてきた。

「なるほど…結界かぁ。」

「お兄さん。風の結界を開ける、『風の鍵』持ってる?」

「ゴメン…持ってないや。」

「じゃぁ、精霊さんに開けてもらうよ。少し下がってね?」

そう言われ、銀はベルゼから数歩下がる。ベルゼは準備体操をし『行きまーす♪』と元気良く言うと呪文を唱え始めた。



『我が名は、ベルゼ。風を操りし精霊よ―我が声に耳を傾け、力を貸したまえ―下級風精霊 ホワイル』



呪文を唱え終わったベルゼの前には小さな風の塊が現れ、次の瞬間その塊は光り輝き中から小さな精霊らしきものが現れた。風の精霊はふわふわとベルゼの周りを飛び回る。

「凄いね…ベルゼ。精霊術士だったんだ。」

「エヘヘ、そんなこと無いですよ。この子はホワイル。下級精霊ですが、とっても頼もしい僕の友達ですよ♪」

そう言うとホワイルはまた、ベルゼの周りをくるりと回る。

「さて、ホワイル。この結界を開けて♪」

ホワイルはくるんと宙を舞うと、ポンッと『風の鍵』を作り出し結界に向けて先を当てた。


                  


すると、結界は一瞬で風に吹き飛ばされ消えてしまった。一瞬の出来事に銀は唖然としてしまう。結界が消えてしまうと、今まで全く見えなかった例の古い屋敷が2人の前に現れる。用事を終えたホワイルはぽふんと消えてしまった。

「あれが…噂の屋敷か。」

「何だか怖そう…でも、頑張ります♪」

「そうだね。じゃぁ、行こうかベルゼ。」

2人は古い屋敷に向かい、歩いた。結界が消えた瞬間から、誰かに見られているような気配がしたが襲ってこないので銀は無視して進んでいった。




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